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神は細部に宿り給う [あんこ学]

とつぜんですが、若い友人の大槻あかねくんから、メールで絵が届きました。大槻くんとは、「絵くんとことばくん」(福音館書店)という絵本を作った仲間ですが、このブログを見て、「こしあんくんとつぶあんくん」のキャラクタを描いてくれたのです。で、ちょっとご紹介。右の頭のとんがったほうがつぶあんくんで、からだに斑点があるのですが、ちょっと見えにくいかな。

さて、先日、一六タルト社長の玉置泰さんの紹介で、赤福の社長さんと一緒に食事をしてきました。濱田典保さんというまだ若い方で、とても感じのいい人です。
で、いいこといっぱい聞いちゃった。そのうち、伊勢の本店へ行って、赤福を作ってるところを見せてもらったり、できたての赤福を食べさせてもらったり、あんこにまつわる話をゆっくり聞かせてもらおうと思っているのですが、きょうはひとつだけ面白い話を披露しちゃいましょう。
あのね、赤福のあんこの波形ね、あれって、女の人が手でやってんですよ。まず餅を入れてあんこを塗る、その作業をする女性をね、「餅入れさん」っていうんだそうです。
その作業は、朝早くからはじまる。なにしろ店は毎日朝の5時に開くので、それにあわせて始まるわけ。よくむかし、酒の麹をつくるのは、若い女性がお米を口の中でくちゅくちゅ噛んで、ぺっと吐き出したものを発酵させて麹にしたっていうでしょ。その女性は処女じゃないといけないとか。で、おっちょこちょいのぼくは思わず、「その餅入れさんは処女じゃないといけないんですか」と聞いてしまったのですが、ばかでした。反省しました。そんな人に限定していたら、とてもあんなたくさんの赤福は作れませんよね。
ただ、あの波形をつくるには、ほんと、年季が要る。最低2年は修業して、検定試験を通らなければ、あの仕事にはつかせてもらえないんだそうです。
それともうひとつ、(あ、ひとつだけのつもりがまたしゃべっちゃう)、赤福は西は兵庫、東は名古屋までしか売ってない。なぜか。めんどくさいからか。違う。欲がないからか。違う。それ以上、商圏をひろげて、あんこの鮮度がおちたりしたらいやだからですって。その日つくったものはその日に売る。翌日まで持ち越さない。そうなると、東京まではちょっと無理ってことになるんですね。

そんな話をあれこれ聞いていて、赤福のおいしさの秘密の一端にふれた思いがしました。そこまでテッテイしているから、赤福にはあんこの神が降臨しているのかもしれない。「神は細部に宿り給う」という言葉がありますが、赤福のあのきめこまやかな波形のなかに、あのこの神々が宿っているような気がしてくる一夜でした。

明日からまた松山へ行くので、きょうは早仕舞いにします。
きょうの目のおもてなしは、南青山の菊家のお菓子。ここは三津五郎さんなんかも来るところで、ちいさな店内に、品のいい和菓子がいろいろ並んでいます。左の三つは、どれもあっさりしたこしあんでした。


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ひろみ

天野さん。はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。
私も赤福大好きです。おふくと赤福って似てるけど味は全然違って(笑)
私は東京に住んでいるので関西に行った際には必ずおみやげに買って帰ります。ぜひ時間ができたら伊勢の本店に行ってみたいと思います。味だけじゃなくて『餅入れさん』の技に拍手♪
by ひろみ (2006-03-17 22:33) 

しろあん

こんばんわ。
赤福のお話、すごいですね。
地元じゃ有名な職業なんでしょうか。

そして、こしあんくんとつぶあんくん。
思わず飲んでたお茶を吹きそうになりました。
超可愛い!
こしあんくんがつぶあんくんのほうに
話しかけてるのがよいですね。
仲良さげ。よかったです。
こしあんくんの斑点、ばっちり確認できますよ。
by しろあん (2006-03-17 23:36) 

sola

うわっかわいい!
「こしあんくんとつぶあんくん」どちらも「くん」男の子ですね。
こしあんはなんとなく女の子のイメージがしておりました。勝手に(笑

それにしても「赤福」のあの波型が手作りだとは!!
寸分違わぬように見えます。てっきりオートメーションかと……。
これから、フタを開ける時の楽しみが増えました。
2年の修行と検定試験……ありがた~くいただきます。
by sola (2006-03-18 22:58) 

スティッチの親分

「こしあんくんとつぶあんくん」最高です!
また時々、書いてメールで送ってくださればいいですよね~♪
「赤福」の社長さん。なんて純粋そうなお顔をしてらっしゃるんでしょう。
きっと、先代さん達もこんなお顔をしていたのでしょうね。
だから、あんな繊細でかつ「餅入れさん」と言う職業の方が手作りで
丁寧に作ってる上品な「赤福」が出来るんですね。
でも、分かったことがあるんです!
京都に家族が行ったら必ずお土産が「赤福」なんです。
「京都に行ってなんで赤福なのよぉ~!」と思ってましたが
売ってる場所が本当に「あんこ」の鮮度が落ちない地域限定だから
「赤福」なんですね。
それを、天野さんのブログで今日知って、家族にはどこかへ
出かけて「赤福」見つけたら絶対買ってくるようにと言い聞かせました~♪
「赤福」を食べる時は「餅入れさん」のことを思い腰を浮かしながら
絶対食べます!貴重なお話ありがとうございました!
処女じゃないと「餅入れさん」になれないと言う天野さんの質問。
私もはじめ、そうなのかと思いました♪そうだったら、ますます貴重な貴重な「赤福様」ですね(笑)))
by スティッチの親分 (2006-03-19 13:35) 

赤福もええけど、タルトもええぞなもし

はじめまして。私はまっちゃま(松山)で、教師をしている者です。今日は子○記念○○○で○がき歌コンテストがあり、ガキ・・・じゃなかった、かわいい生徒の表彰式に付いていきました。
そこでしみじみ思ったのですが、天野さんのコメントは、文章だけでなく発語においてもキレがあって知的でそこはかとない「笑い」がおありですね。自宅で検索しまして、天野さんがCMや子規だけでなく「あんこ学」の権威であることも知り、ストライクゾーンの広さに脱帽です。
天野さんが「あんころじすと」であることをもっと早くに知っていれば、私も松山のおいしいあんこ菓子をお持ちしましたのに・・・残念です。
私のおすすめ松山あんこ№1は「みよしの」の五色おはぎです。小さくて素朴で思いやりのつまったあたたかい味です。
おすすめ№2は、松山市北部の和気町にある「萬国堂」のタルトです。この店はいつも電気がついてないので客も閉店と間違えてあまり入りません・・・よもだです。あんこは昔ながらの製法で、えっちらおっちら丁寧に作っています。「一六タルト」も「六時屋のタルト」もおいしいのですが、ここの手づくりあんこのタルトが、小味がきいていて私は好きです。店主のお人柄がしのばれる味です。
近くにお立ち寄りの際は、ぜひ御賞味下さいませ。
by 赤福もええけど、タルトもええぞなもし (2006-03-19 21:41) 

銀鏡反応

あらあら、かわいいです~!こしあんくんとつぶあんくん。愛嬌たっぷりでキュートで、観ているだけでなごみます。
ところで、自分は東京は北区の王子近辺に住んでいるのですが、その王子近辺の町の一つ、東十条に、黒松という和菓子店があるのですが、その名物がその名も「黒松」。まあいってみれば「ドラ焼き」ならぬ「トラヤキ」の一種なのですが、つぶあんいりでこれがまたあま~い、昔ながらの味わいのするつぶあんなのです。といっても、自分は20代の終わりに口にしたっきり、めっきりこの「黒松」とも御無沙汰なのですが…。
JR京浜東北線東十条駅から坂を降りきったところにある御菓子屋がその黒松さんです。近くにお立ち寄られた際には、是非御賞味あそばされんことを…。
by 銀鏡反応 (2006-03-20 21:28) 

いーちゃん

「ぼくのおじいちゃんのかお」天野さんの書いた本です!
あと72票で復刊できます。
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=24605
↑から、どうかみなさま投票して下さいませ~!
みなさまの1票でどうか復刊させて下さいませ~!
どうかどうかお願いします!!
by いーちゃん (2006-03-22 06:48) 

Shiori

天野さんはじめまして。
私は卒論で天野さんを取り上げたほど「マニア」だったりします。
ブログを見つけ、嬉しさのあまりさっそく参加させて頂きました。

関西に住んでいると、いろんなところで「赤福」を目にするので、
地域限定販売だったとは驚きです。
あの波型、よ~く見ると指紋の跡がついてるので手で付けてるってわかりますよ。

ところで赤福に入っている絵の描いてるカード、毎日違うってご存知でしたか?
by Shiori (2006-03-22 10:45) 

gillman

 こんにちは
 そうですか赤福って名古屋までなんですか、そういえばそう何度も食べたことはないですね。でも、あのさっぱりした甘さは印象的ですね。なんか急に赤福が食べたくなっちゃった。
 この間、久しぶりに上野の「かるた屋」さんの「都まんじゅう」を食べましたが白餡も捨てたものではなかったですよ。
 そう、波型のあんこって言えば僕のうちのすぐ近くの西新井大師の門前に草団子を売っている店が並んでいます。「田口屋」とか「清水屋」とか何軒かあるんですが、その草団子にあんこを塗るおばちゃんの手際がまたいいんですね。折箱に草団子が整列して寝ている上にあんこを被せていくんですが、その量が多からずかといって団子の頭が飛び出さずちょうどいい量なんです。それも波型です。
 最後に折箱の隅に残ったあんこを未練たらしく楊枝でつついて食べるのがこれまた美味しいんですね。これからちょっと大師に行ってきますね。
では
by gillman (2006-03-23 10:16) 

megkiwi

初めまして。
大好きな赤福の話でしたのでうれしく読ませて頂きました。
伊勢の本店へ行かれる際は夏場にぜひ。
赤福氷が絶品!ですよ。
by megkiwi (2006-03-23 23:28) 

arbinoni

むか~し(たぶん30年くらい前)、伊勢の赤福本店をモデルにしたドラマありましたよね。あれを見て以来の赤福ファンでした。
ところが関西に引っ越してみると、まるで大手メーカー品のごとくに毎日どこでも買える!で、すっかり有り難みがなくなってしまい、初めて伊勢に行ったときにはなんと赤福を買わずに帰ってきてしまいました。こんなに沢山作ってお味のほうは大丈夫なんだろうか、って心配もあったのですが、本店のはお味違っていたのかしら・・・?
同じ三重県発の「伊勢うどん」がほぼ地元に収まっているのに比べて、赤福餅の関西征服には目を見張るものがあります。三重県人の商売っ気のなさについて考察しているのですが、赤福さんだけは別格・・・?
http://blog.livedoor.jp/arbinoni/archives/50057514.html
奈良の當麻に中将餅というのがあり、赤福のようなすっきりしたこしあんのヨモギ餅なんですが、地元(二上山周辺)ではかなり有名です。中将餅は(私の知る限り)他所では買えず、休日などは午前中に売り切れてしまいます。
by arbinoni (2006-03-24 09:24) 

あまの

「ひろみ」さん。ようこそ。おふくはまだ食べたことがありません。そのうち、ぜひ食べてみたいと思ってます。ちょくちょく遊びにきてください。

「しろあん」さん。こしあん君とつぶあん君は、いろいろ働いてもらおうと思っているのですが、どう働いてもらったらいいか。思いついたら、教えてください。

「sola」さん。そうか、こしあん君は女の子っていう手もありましたね。そのうち、こしあん君の妹を描いてもらいましょう。

「スティッチの親分」さん。いいアイデアですね。赤福を食べるときは、餅入れさんのご苦労を思い、ちょっと腰を浮かして食べましょう。新幹線のベンチなんかで腰を浮かして食べてたら、ちょっと粋かもしれませんね。

「赤福もええけどタルトもええぞな」さん。みよしののおはぎは、昔から大好物です。満国堂のタルトは知りませんでした。4月に松山へ行ったときは、食べたいと思います。

「銀鏡反応」さん。東十条には、ときどき会う友人がいるので、こんどあうとき黒松のどら焼きを持ってきてくれるように頼んでおきます。もしかしたら、彼、このブログを見て、黙っていても持ってきてくれるかな。おい、見てるか。頼むぜ。

「いーちゃん」さん。「ぼくのおじいちゃんのかお」の復刊に力を貸してくださってありがとう。ぼくよりも写真家の沼田早苗さんよりも、亡くなった加藤嘉さんのために復刊になるとうれしい。ほかの人でもういちどあの本を作れといわれても、あの人に代わる人はいません。すてきな、すてきな役者さんでした。

「Shiori」さん。赤福のあんに、よーく見ると指紋がついてる!すげえ!ぶったまげ! それをたしかめようとするだけで、赤福がばんばん売れちゃうよ。たすけてくれえ!

「gilman」さん。西新井大師さんの門前町。子どものころ、よく行きました。なつかしいなあ。草団子、一緒に食べたいですね。あんこはもちろん、こしあんでしょうね。

「meg」さん。赤福氷って、赤福のあんこの上にかき氷が乗ってるんですか。それとも……。なんでもいいから、食べたい。

「arbinoni」さん。中将餅ねえ。由緒のありそうなお餅ですね。こんど奈良へ行ったら、必ず食べます。うれしいお知らせ、ありがとう。
by あまの (2006-03-24 22:14) 

TOMOはは

先日も書きましたが、赤福は 私の中での
大好きなこしあんのお菓子の、おそらく上位ベスト3に確実に入ります!!

そうです!!
あの赤福のお餅もあんこも、おそらく超一流の逸品で
それもその伝統をきちんと受け継いでいらっしゃるところが
凄いことだと、素人の私にもよくわかります。

以前は、岐阜の大学からの帰省土産に、必ず名古屋で買いました。
最近は、たまに近くのデパートの名品展に出たときには
買いに行くようにしております。

今は、本当においしいものがたくさんあって、贅沢なものもないわけではありませんが

私にとって赤福は、少しむかしの青春の思い出にもつながる
その変わらないおいしさが、どこか懐かしく
そして、やっぱりおいしい幸せを運んでくれる・・・そんなお菓子です!!
by TOMOはは (2006-03-25 12:27) 

oko

赤福は兵庫までなんですか?それでかな?松山には伊予福という赤福には訴えられそうなお菓子があります。赤福が食べたくなったら伊予福を買って食べていました。同じようにおいしいです。
by oko (2006-03-26 21:18) 

赤福太郎

天野さんのうそつき。
by 赤福太郎 (2007-10-19 09:47) 

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