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私は混血児だ。 [あんこ学]

私は混血児だ。
父は西日本国の松山、母は東日本国の東京千住の生まれである。
ま、いまは、松山の出身だ千住の生まれだなんて言っても、親のほうがごちゃごちゃの混血になっていることが多いから、あまりイミがない。が、私の父が生まれた明治中期の松山には、先祖代々の松山人しかいなかった。「しかいなかった」は言い過ぎだとしても、9割は生粋の松山人だったと言ってよろしい。
東京の千住も、母が生まれたころはほとんどが千住の人だった。とくに女性は、玉の輿にのって遠くへ行く人もいたろうが、幸か不幸か母は輿にのることもなかったから、千住に生まれて千住で育ち、仕事を探して松山から東京に来ていた父と千住で結婚した。
というわけで、どちらもけっこう純粋な西日本人と東日本人であり、そんな二つの血が、いまも私のからだのなかで、日々、「あほ!」「ばか!」と言い合いをしながら同居している。(ま、もとをただせば、東日本人も西日本人もアジアのいろんな民族の混血だけどね)
で、私が生まれた戦前の東京には、まだ東日本の文化的気風が、というより江戸のそれが、色濃く残っていた。とりわけ、下町はその空気が濃く、家の中でも、ちゃきちゃきの江戸弁を使う母が多くをしゃべり、なもしなもしの伊予弁の父はすくなく答えるというカタチで暮らしていたように思う。
下町の路地にも、江戸弁はあふれていた。「ゆう坊、そんなところでしょんべんしやがって。おてんとさまはちゃんと見てるんだぞ、このぼけなす」と、口うるさく私を見守ってくれた近所のおじいさんやおばさんに、思えば私は育てられたようなものである。そう、どこの家でも、親というのは商売にいそがしくて、子どもなんかかまっていられなかったのだ。

それが戦後、特に1960年代から、一変した。路地がつぶされて自動車道路になっていくのと並行して、江戸が東京になり、あれよあれよというまにトーキョーになった。
この江戸と東京とトーキョーは、まったくの別物である。とくにトーキョーは、東日本国の都市というより、いまや東日本国にも西日本国にも属さない独立国家と言ったほうがいい存在になった。(トーキョー人を日本人と思うと大間違いである)
で、西日本国の中心都市・大阪が目の敵にしているのは、実は、このトーキョーなのだとぼくは思っている。大阪人だけではない、そのトーキョーは、旧東京人(江戸人)も嫌っているのだ。「永遠のメモリアルアート」なんて、旧東京人に言わせれば、「ケッ、ちゃんちゃらおかしくて、へそが茶をわかさア」ってなもんなのである。
ちなみに、「へそが茶をわかす」というこの江戸語もトーキョー人には半分くらいしか通じない。「広告批評」誌が若者100人を相手に行なった調査によると、この言葉に対する正解率は58%で、なかには「奇跡的なことが起こること」とか「へそに体温を集中して気を発すること」なんて答えるトーキョー人もいたという。
ところで、である。ここがモンダイの核心なのだが、このトーキョーでは、いま、あんこ文化が急速に衰えつつある。あんこっぽいものはいろいろあって、それはいかにもこしあん風の洗練顔をしているのだが、これがまったくのいかさまこしあんなのだ。こういういんちきこしあんは、「永遠のメモリアルアート」に葬らなければならないと私は考えているのだが、もはや夜もふけた。
つづきは次回にして、今夜のおもてなしは、このミニたいやきである。江戸が生んだこの庶民的エネルギーあふれる菓子を、なんと、こんな金魚みたいなケチな鯛にしやがって。ケッ、ちゃんちゃらおかしくって、へそが茶をわかさア。おい、みんな、さっさと食っちまおうぜ。


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スティッチの親分

ぎょぇ~~~!
たい焼きが小さい!可愛い~♪
この大きさなら天野さん、今食べても身体壊さないと思います 笑
私は和歌山と愛媛のミックスです。でもおじいちゃんは仙台です。
およ?私はミックスミックス??
また話違うんですが朝青龍はどうしてあんなに日本語がうまいんでしょう??
やはり日本人はモンゴリアン?で朝青龍もトーキョー人なのかしら?
キムタクを肩車してるし 爆
今の東京は色んな国や地方の人であふれかえってるから
本当に独立国家ですね。
ちなみに、私はたい焼きではカスタードクリームが好きです 笑
だから私もトーキョー人だぁ~
朝青龍の日本語、あれは凄いと思いませんか?
DNAが同じだからでしょうか?
たい焼き、今からどこに買いにいけばいいんですかぁ~!
罪なブログです 悲 食べたいです。
でも、和歌山と愛媛も全く違うんですよね。
なんで愛媛は西日本なのに「バカ」なんでしょう?
「アホ」って言われると傷つくんですよね。
愛媛恐るべし。。。
by スティッチの親分 (2006-02-02 01:15) 

teng

はじめまして、いつも楽しく拝読しています。
あんこは両党(両刀?)で、どっちと聞かれても本当に
困ってしまいます。
こしあんの舌触り、こしあんの歯触り、それぞれの風味・・・
う~ん、選べません。
ちなみに子供のころはブリーフで中学からトランクスに切り
替えたクチです。
ブリーフの良さは重々承知しているのに見栄え(下着なのに)
を理由にトランクスにしました。
前置きが長くなりましたが、僕はずっと「へそで茶が沸く」と
言うのだと思っていました。
しかし辞書には「へそが茶を沸かす」とだけあり、妙なところで
敗北感を一人味わっております(笑)
トーキョー人決定です。
(埼玉出身なんで正確にはチホー人ですが、両親はともに蔵前です)
これからもチョイチョイ書き込みしたいと思います。
それでは。
by teng (2006-02-02 17:46) 

teng

訂正。
つぶあんの歯触りですね・・・。
すみません。
by teng (2006-02-02 17:49) 

銀鏡反応

こんばんは。
「へそで茶をわかす」の正解率が、58%…。
いまどきの若い者にはこの言葉の意味(あるいはニュアンス)を知らないのが増えているんですね。
「心底可笑しい」とか「腹の底から笑える」というニュアンスというか、意味を、若いトーキョー人は知らないまま覚えているのかもしれません。
そして、このミョーにかわいらしいタイヤキ。ライターと比べるとちっちゃくて一口で食べ終わっちゃいますね。でも、私は昔ながらの大きさのタイヤキがダイスキです。ハイ。
今、何処を歩いていても、もう江戸の面影も旧東京のそれも、急激に薄くなっちゃって、どこの国だかわからない、ガラスに鉄骨で出来たインテリジェント気取りのSFチックなトーキョーの世界ばっかりになっちゃって、昔の光いまいずこ、てな感じになってしまっている。私が大好きな街に下北沢があるんですけど、旧東京の名残りを色濃く残すあの迷路みたいな、昔ながらの商店街が、高速道路建設の区画整理の為に近々姿を消す、と聞いた事がアリマス。なんだか、寂しいです…。
味のある江戸と旧東京が、トーキョーに淘汰されてゆく…。なんともはや、無情であります。
by 銀鏡反応 (2006-02-02 19:17) 

愚陀仏あん

西日本国は伊予の国・松山の原住民です。
生まれも育ちも松山です。

お正月に石手寺へ初詣に行ってきました。
別段信心深いわけではありませんが、なんとなくセレモニーかなと思って行ったわけで、なんとなく線香を焚き、なんとなくろうそくをあげ、なんとなくお参りをしてきました。
参道にて鯛焼きの店を発見!10個500円、おもわず安いと飛びついたものの、よくよく見てみれば、ちっちゃいのったらありゃしない。でも、写真に写っているのよりかは少し大きかったかも。ライターを手に取りながら、どれくらいだったかなと思いうかべているのだが、今となっては手遅れ、おなかの中である。いや、とっくの昔にからだから出てしまっている。後で気が付いたのだが、売られていたのが東京ケーキ屋さんの黄色いテントだったような気がする。これって東京サイズ?

先日、と言っても先月の11日だが、職場で鏡開きをしました。
ぜんざいの材料の「あんこ」を買うため近くのスーパーへ行ったのだが、普段は缶詰しかないのに、時節柄か業務用サイズの袋入りのものが山積みになっていました。これだと思い手を伸ばしたのだが、こともあろうか、「つぶあん」と「こしあん」があるではないか。一瞬ちゅうちょしたものの、「つぶあん」を手に取っていました。
私の中では、ぜんざいは「つぶあん」、おしるこは「こしあん」なのです。これって間違いでしょうか。

松山には「伊予福」があります。今度お越しの折には召し上がってみてください。
by 愚陀仏あん (2006-02-03 00:24) 

anmomo

なんで「へそで茶を沸かす」って例えるんでしょ?これって小ばかにしてる事になるんですか?私の所は関西よりなんで「あほ」の後に
「ちゃうの」と付けます。「あほちゃうの」キツイでしょうか?文で書くのと
実際に聞くのとでは多少ニアンスが違いますけど^^

たいやき最近ミニサイズありますね^^ちょうど良いサイズだと思います
天野さんには邪道でしたか?
夜遅いおやつなら持って来いなんでは?。。。。。。
by anmomo (2006-02-03 14:13) 

sola

鯛焼きミニサイズを初めて買った日、
「鯛焼き20個買ってきたから、一人5個ずつ食べよう」と言って、
家族から「バカじゃないの?」とあきれられた関東人です。
このギャグは同じ相手に二度と使えないのが残念!
相手を変えて、合計3回使いました……。

「江戸と東京とトーキョー」このニュアンスの違い、よくわかります。
ちなみに、「てやんでぇべらぼうめ!こちとら江戸っ子でぃ!」を、未だかつて生で聞いたことはありません。落語の世界?築地とかなら今でも言いますか?一体何時ごろまで、こんな風にいってたのでしょう。少なくともトーキョー人は使いませんね。
by sola (2006-02-03 20:32) 

gillman

僕もお化け煙突の見える千住で育ちました
子供のときはいつも風呂屋の一番風呂にかけていきました
一番風呂は熱いのでうめようとすると
必ず怖い親父が先にはいっていて「何すんでぇ、うめんじゃねえよ!」と頭を張り倒されていました
さっき恵比寿のガーデンプレースに行ってきましたが、なんだか張子の街みたいで…
ま、残っていれば100年くらいたったらいい町並みになるかもしれませんが
by gillman (2006-02-03 21:48) 

あまの

「スティッチの親分」さん。いい着眼ですね。朝青龍は原日本人なんですよ、きっと。ぼくらより、ずっと日本人じゃないですかね。琴欧州、あれは外国人。日本語をしゃべれる顔じゃありません。あごや口腔の構造が基本的に違うんですね。では曙や小錦はどうか。それはスティッチに聞いてください。

「teng」さん。「へそが茶をわかす」とも「へそで茶をわかす」とも言うんですね。だから、「へそで茶がわく」でもいいんじゃないですか。どうせ、そんなお茶を飲んだ人は、どこにもいないんですから。ちょいちょい来てください。

「銀鏡反応」さん。シモキタが変わるって、困ったことですね。千住育ちのぼくにとっては、いまやシモキタにしか千住はない。大切なのは、路地なんですね。路地には、ぼくら人間の分身である妖怪たちが住んでいる。路地をつぶすことは、人間そのものをつぶすことなんですよね。

「愚陀仏あん」さん。東日本国では、しるこはつぶあん、ぜんざいはこしあんです。(ただし、ふつうのしるこはつぶあんですが、御膳汁粉はこしあんです)。東日本と西日本では、まったく反対になっていますが、どっちも自分のほうが正しいと信じて、妥協しません。ただし、「伊予福」と「赤福」とでは、名前が違うだけではない、味もはっきり違うはずです。

「anmomo」さん。ご存じの通り、「へそが茶をわかす」というのは「腹の底からおかしい」というイミですが、腹の底からおかしいようなことに接したときに、へそが茶をわかしているように感じたんでしょうね、ご先祖さんは。その感覚ってすごいですよね。すごく怒ったときも、ほら、いつもは横になっている腹が、縦に立ってきたような感じがしますよね。しませんか?すいません。

「sola」さん。たいやきミニサイズのギャグ、笑いました。ぼくもやってみます。ところで、ちゃきちゃきの江戸弁をいまどき使ってる人は、ほとんどいませんね。結局、文化の上では関西に負けたんですね。ま、そんななかで、ぼくは正調の江戸弁を使える貴重な人間だと思っています。なので、そのうち文化庁から人間国宝に指定されるかもしれない。そうなったら、ぼくと会うときは、かしわ手を打ってください。お賽銭もお忘れなく。

「gilman」さん。お化け煙突の仲ですね。子どものころ、ぼくもいちばんへよく行きました。で、湯ぶねのなかでは、いつも近所のおじいさんが、浪花節(浪曲)をうなっていました。清水次郎長伝です。「森の石松・金比羅代参」なんかは、そこでおぼえたくらいです。つまり、当時の子どもぼくたちは、銭湯で大衆文化のすばらしさを学んだんですね。銭湯が少なくなって、大衆的教養もしぼんでしまいましたね。
by あまの (2006-02-04 00:51) 

54.23

はじめまして。CM天気図いつも読ませていただいております。
私は東京都出身なのですが、一人暮らしがしたくて、大学から大阪に住んでいます。大阪に来て2年になりますが、学食でおじいさん(教授?)が「たぬき」といって、当然のようにお揚げののったそばがでてきて、いまだに驚いたりしています。
こちらに来たばかりの頃、自分の出身を人に言うと、「じゃあトーキョー人だね」などとよく言われたのですが、それと同じくらいよく「トーキョー弁しゃべってるもんね」と言われて戸惑いました。大阪に来る前はトーキョー弁という言葉もきいたことがなく、自分の意識では標準語を話していると思っていたからです。でも、そう言われて注意してみると、確かに標準語とは異なっているし、もちろん江戸弁とも全然ちがいます。大学には、主に西日本ですが、様々な所の出身者がいるので、方言のことが時々話題にのぼりますが、私の友人たちはどこの出身者も標準語とは別にトーキョー弁があるという認識をもっているようなので、驚きました。
トーキョーの外に住むようになってから、はじめて思いましたが、本当にトーキョーは異国のようです。
by 54.23 (2006-02-04 13:28) 

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