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ちょっと寄り道 [あんこ学]

こんな話を聞いたことがあります。
昔、中国では、何かのコンテストをしたとき、順位を1位・2位・3位……とはいわずに、1品・2品・3品……と呼んだんですって。が、すぐれてはいるけれど、どうも同じモノサシでは計れないような、個性の強いものがある。そういうものには、1品、2品……の序列とは違う、「別品」という言い方で評価した。きれいな女性のことを「別嬪」というのは、そこからきてるんですね。ついでに言うと、別嬪は女性とは限らない。男にも使いました、いえ、ホント。
で、一茶です。古今の俳人ベストテンをあげろ、と言われたら、1位は芭蕉だね、2位は蕪村かな、と並べていくことになるんでしょうが、さて、一茶の扱いがむずかしい。ああだこうだと考えたすえに、やっぱり小林クンは「別品」だな、ということになるんじゃないでしょうか。
この人は信州の雪深い山村に生まれて、お母さんが早く死んだもんだからいろいろ苦労して、15歳のときにほとんど身ひとつで江戸に出て、渡り奉公などでをしながら俳諧を習い覚えて、なんとか食べられるようにはなったものの俳人番付の上位には入れなくて、最後は郷里に戻って土地の有力者たちに俳句を教えて暮らすという、ま、そんな不遇の人生を送った人なんですね。
そんな人生の影が、彼の俳句のそこここに映りこんでいますが、しかしその表情は、ときに軽妙、ときに洒脱、ときに痛烈、ときに風雅と、本当に多彩な魅力にあふれています。そんなこんなを考え合わせると、やっぱりこの人は、「別品」中の「別品」ということになりそうです。
  ともかくもあなた任せのとしの暮
  衣(ころも)かえてすわってみてもひとりかな
  蚊やりから出現したりでかい月
  家なしがへらず口きく涼みかな
  隙人(ひまじん)や蚊が出た出たと触れ歩く
  牢屋から出たり入ったり雀の子
  昼の蚊やだまりこくって後ろから
  送り火や今に我等もあの通り
で、この人の俳句は、つぶあんかこしあんか、ということになるんですが、つぶあんとも言えるし、こしあんとも言えるんですね。でも、ぼくの評価は、つぶあんでもこしあんでもありません。そう、別品の「白あん」なのでした。 
というわけで、今回の目のおもてなしは、前にもご紹介した最中の再登場です。この白あんの盛り上がりぶり。こんな最中は見たことない。最中の「別品」とはこのことです。 


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スティッチの親分

やったぁ~!また一番のりかな♪
「別品」って言葉好きです。同じモノサシで計ってはいけない物、者があります。まして人間はみんな個性があり違う考え方を持ってる生き物なので「別品」ですよね。キレイな女の人たしかに別嬪さんね!って言いますよね。
今では、なかなか使わないけど(笑)また言葉のお勉強できました。
俳人の一茶さんは「白あん」になりますか(笑)
私、思うんですよね。不遇の人生を送った人って色んな経験や辛い思いをして色んな見かたが出来る人だって。
だから、心が優しい人が多いですよね。
一茶さんの俳句が多彩な魅力であふれてるのは、色んな経験から、軽妙、洒脱、痛烈、風雅な俳句が作れるんですよね。
これがホリエモンだったりヒューザーの社長が軽妙、洒落、痛烈な言葉で話してもお洒落でない!心の中身のない人は「特別品」で賞味期限切れかなんかで、どこかに捨ててしまいたいですよ。
一茶さんの「白あん」説すごく分かります!「別品」扱いになるのもなんとなく分かります。
私はバカですが一茶さんの様に心の温かい「別品」人間になりたいです。
隙人(ひまじん)や蚊が出た出たと触れ歩く
が一番好きです♪
天野さん、最近人間も「別品」がいなくなってきた感じがします。
荒地にいるみたいです。だから、ぐちゃぐちゃあんこの時代に突入してませんかぁ?
長々とすいません。ドロン、パッ♪(б▽^*)ノ⌒☆
by スティッチの親分 (2006-01-19 17:07) 

ぶらぶら

こしあん、つぶあんでここまでブログが続くということに、正直、驚いてます。久しぶりに、このブログに来て、もうそろそろ、あんこの話は終わっているだろうと思っていたのですが。頭が下がります。

ちょっと、時事ネタ。株式市場はライブドアショックで大荒れでしたな。私は実際には株を持たず、ふところはぜんぜん痛みませんでした。ただ、野村のバーチャル株式倶楽部というゲームで、株式市場の値動きを楽しんでいたのですが、100万円からはじめて、108万まで増えたのに、102万まで減っちゃった。かぶ、おそろしや。

もうひとつ、時事ネタ。携帯電話のauが、iPodのiTunes Music Storeと同じようなものをやるらしい。そう、携帯電話が音楽プレーヤーとして使われる時代がくるかも?そのため、パソコンでも音楽を買えるようにしなくっちゃというわけで、音楽販売サイトDUOMusicStoreを作るんだと。ただ、名前が気に食わん。DUOよりもauの方が名前が売れているし、ブランド力があるのになぜ使わんのだろうか?KDDIはブランド戦略でつまずく予感。

追伸、 ほぼ日刊イトイ新聞で糸井さんとタモリさんの対談が連載されている。今の話題は、寿命。結構おもろいよ。
by ぶらぶら (2006-01-19 19:05) 

わかば

本当に一茶さんの俳句ってわかりやすいですね。
で、「へらず口」って昔からあることばなんですね。今でもよく使われますよね!(うちだけでしょうか…?)他にも「でかい」とか「だまりこくる」とか…
ということは、しゃべりことば自体は昔とあんまり変化していないってことなんでしょうか。書き言葉はずいぶんかわったように思うけど…昔の物語とかは古語辞典がないと単語の意味が違っていたり、物語自体読めなかったりするし…
俳句自体17文字という制限があるからでしょうか?分かりやすいことばを使うのは。

一茶さんみたいに心優しい人間になるには、私自身もっといろいろな経験をしないといけないな…と思いました。まずは、一茶さんの伝記を読んでから作品を読んでみたいと思います。

それにしても、毎回のことながらおいしそうなお菓子の写真!今度からブログを見るの、もっと早い時間にします!!
深夜では中途半端にお腹が空いてしまうし、夢にまで出てくる気がします(>_<。)
by わかば (2006-01-20 00:19) 

わかば

本当に一茶さんの俳句ってわかりやすいですね。
で、「へらず口」って昔からあることばなんですね。今でもよく使われますよね!(うちだけでしょうか…?)他にも「でかい」とか「だまりこくる」とか…
ということは、しゃべりことば自体は昔とあんまり変化していないってことなんでしょうか。書き言葉はずいぶんかわったように思うけど…昔の物語とかは古語辞典がないと単語の意味が違っていたり、物語自体読めなかったりするし…
俳句自体17文字という制限があるからでしょうか?分かりやすいことばを使うのは。

一茶さんみたいに心優しい人間になるには、私自身もっといろいろな経験をしないといけないな…と思いました。まずは、一茶さんの伝記を読んでから作品を読んでみたいと思います。

それにしても、毎回のことながらおいしそうなお菓子の写真!今度からブログを見るの、もっと早い時間にします!!
深夜では中途半端にお腹が空いてしまうし、夢にまで出てくる気がします(>_<。)
by わかば (2006-01-20 00:21) 

わかば

若葉マークゆえ、あせって同じ文書を2度も送ってしまいました。
すみませんm(_ _)m
ちなみに、一茶さんの今回の句で気になるのは
  ともかくもあなた任せのとしの暮
です。この句は一茶さんの「おらが春」という句集の最後に出て、最初は「目出度さもちう(ちゅう)位なりおらが春」という句ですよね。この順番にしたのには理由があるはず。早速、一茶さんの伝記を読まねば!!
by わかば (2006-01-20 00:39) 

tami

「やれ打つな 蝿が手をする 足をする」
この句を知った時から、蝿を叩こうと思うと、叩かないでって言っているように見えて叩けなくなりました。
それからは、手でしっしって追っ払っています。
この句を知らなかったら、思い切りぶったたいている事だと思います。
by tami (2006-01-20 00:42) 

nina_day

入力したとたん、ソネットに「エラーです」と表示され、タイムリミットで前回の問答にのり遅れてしまった感がありました。ザンネンです。
何あん?ときたので、これは白か…?でも、まさかずんだか栗とかもあり…?と想像してました。^ ^ なるほど、「別品」なのですね。
一茶さんの人生を知らなかったので、今回はじめて知り、とっても興味が湧きました。どの句もすっごくいいですね!“蚊やりから出現したりでかい月”とか幼い頃、夏に祖父母の家で蚊やりを吊るすのがすごい楽しみでした。ほんとは、キントウンみたいなのにのっかってみたいという願望が強く、その蚊やりの上にのっかるのが夢だったんですが、重いし無理。山中なので夜がとても静かで、仏壇と柱時計が怖くて…と、その頃のことを思い出します。
それにしても…ぱりぱりとほくほく、美味しそう。素敵な最中ですね。
by nina_day (2006-01-20 02:22) 

gillman

そうか、白餡という手がありましたか
それにしても山盛りの白餡 !

一茶はほんとうに面白いですねぇ
一茶の人生は俳人という響きからはほど遠いものだったようですね
だから人間らしい欲や感情が豊かなのでしょうか
一茶と言うと、なんとなく奥さんに叱られている姿を想像してしまいます
ソクラテスやトルストイのように、人は悪妻で哲人や詩人になるといわれますが
一茶もそうなのかな
してみると僕の文章が下手なのは妻が良いからか?
by gillman (2006-01-20 08:31) 

anmomo

昔の数え方で、一品、二品なんて数え方があったんですね。
別品=別嬪なんて。。。そこから来てるんですか?綺麗な方と言うのは
やはり別品なんですね!たまに私も「べっぴんさん!」なんて言ったりしてましたがまさかそんな所からなんてこの記事を読むまでは全くの無知でした。恥ずかしいですね^^;
別品=別嬪は見た目だけなんでしょうか?内面の別品=別嬪とは言わないんでしょうか??なんかバカな質問ですね^^;

今回のおもてなしは、また凄い最中ですね!
そんなにあんこ入れなくてもって思う位びっしり入ってますね。
小豆よりはどちらかと言うと白餡の方があっさりに見えるのは私だけでしょうか?いつも思ってしまいます^^
そうそう天野さんはご存知かもしれませんが、「たねや」の最中も美味しいですよ。小豆あんとゆず餡の半分ずつになっていて一つで二度楽しめます^^
by anmomo (2006-01-20 14:07) 

ひゃくみ

一茶は、白あん?
あんこじゃないけど一茶は
「おやき」じゃないんだろうか。
一茶については半藤一利さんの
『一茶俳句と遊ぶ』に「俳諧の根本義は
滑稽諧謔である。」「世に泣き笑いの文学と
いうものがあれば、一茶の句はその第一等に
位置する」とある。
藤沢周平の「一茶」は、人間くさい一茶の姿を
あますところなく書いた小説だった。
「芭蕉には韜晦があるし、蕪村には気取りがある、
一茶は二万の句を吐いた俳人である一方、弟から
財産を半分むしりとった人間ですから、小説的な
人間です。」
一茶は、つぶあんでもなく、こしあんでもなく、
中に野菜の具をつめた「おやき」じゃないでしょうか。
つぶあん派、こしあん派の区分のほかに
もっと素朴でじっと我慢してきた文化の系譜が
この国にはあったのではないでしょうか。
    『是がまあつひの栖か雪五尺』
by ひゃくみ (2006-01-20 20:32) 

あまの

「スティッチの親分」さん。たしかに別品不在の時代ですね。親分におなじみの世界でもそうでしょう。昔は、次郎長の子分と言えば、1品が大政、2品が小政、3品が大瀬半五郎、とつづくなかで、別品とくればもう「森の石松」だってことは、だれもが知ってましたよね。でもいまは、森の石松なんていっても知らない人のほうが多いくらい。だから、森喜朗さんが首相だったときに「森のおそまつ」なんてからかっても、若い人には通じなかったようです。それだけ、別品を見かけない、規格品だらけの世の中になってしまった。つまんない時代ですね。

「ぶらぶら」さん。あんこは不滅です。巨人軍並みですね。ちなみにぼくは巨人嫌いですけど。

「わかば」さん。俳句に口語が入ってくるのは、一茶以前にもあります。こんどの記事で紹介しますね。

「tami」さん。「やれ打つな」の句は、「蝿が手をする」じゃなく「蝿が手をすり」なんですって。ぼくも最近まで「する」だと思ってました。たしか、学校でそう教えましたよね。ま、どっちでもいいようなもんですが。それと、これは慈悲の句ではなく、蝿のおもしろい動作をたのしむためにしばらく打たずにおこうよ、というイミだと言う人もいるんですね。俳句の正解って一つじゃない、どう解釈してもいいんですね。

「にーな」さん。あの最中、あんこが威張ってるという感じがして面白いでしょ。食べても、口のなかであんこが威張ってました。

「gillman」さん。一茶って、芭蕉や蕪村にくらべると、よくも悪くも人間くさい。近代人のにおいがする。そこが後世の小説家や劇作家の共感をよぶんでしょうね。一茶を扱った小説や芝居の多いこと。でも、その人生よりは、その俳句のほうがずっと面白いとぼくは思います。

「anmomo」さん。「内面の別品」ねえ。ぼくは、人の外見は内面のあらわれであって、つまり、外見は中身だと思っています。中身のいい人は、ぜったい外見もいい。ま、そうとでも思わなきゃ、人間、やってられませんぜ。

「ひゃくみ」さん。「おやき」ねえ。ぼくは一茶にとても豊饒な世界を感じます。ま、豊饒なおやきもあるでしょうが。
by あまの (2006-01-20 22:13) 

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