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反論の権利 [ことばの元気学]

ことの起こりは、この広告でした。
反論権.jpg
1973年12月2日、サンケイ新聞にのった自民党のこの広告が、反論権問題に火をつけました。
「前略日本共産党殿 はっきりさせてください」
というキャッチフレーズで、自民党が共産党を批判したのです。
内容は、当時の共産党が参院選むけに掲げてきた「民主連合政府綱領」が、自衛隊・安保条約・天皇などの点で共産党の綱領と矛盾している、はっきりしてほしいという趣旨のものでした。(イラストがすごいですね)
これに対して共産党は、ぜひ反論したい、自民党の広告と同じ大きさの反論スペースを無料で提供してほしいと新聞社に申し入れました。
当時、ドイツではそのテの反論権が存在していましたし、アメリカではテレビでの反論権が認められていたんです。
が、サンケイ新聞は有料ならいつでもスペースを提供するし、自民党がその分もカネを出すということが確認できれば、無料で提供するという回答をしました。ま、ホンネは拒否ですね。
で、憤慨した共産党は東京地裁に仮処分を提出して、問題を法廷闘争に持ち込んだのです。
が、裁判所はこの広告が共産党に対する名誉毀損には当たらないとして、反論権の問題には立ち入らぬまま申請を却下してしまった。で、反論権の問題は、結局うやむやになってしまったというように、ぼくは理解しています。

もっとも、当時、反論権を認める新聞社が、まったくなかったわけでもない。
下の2点の広告は、1981年に主要全国紙に出た自衛隊の政府公報(広告)と、これに対して浦和地区労が軍事費増強反対の立場から埼玉新聞に出した同じスペースの反論広告です。
ただし、こちらはタダではなく、4分の1の料金だったそうです。
反論権3.jpg 
ま、この問題はなかなか厄介で、日本のマスメディアで反論権を成立させるのは容易なことではないと思います。
が、容易でないからといって、ふんだんにカネを持っている側の一方的な意見広告が野放しになっていいはずはない。
これからの問題としては、次のように言うことができるんじゃないでしょうか。

①政党間の争いならともかく、原発のように国論を二分するような大きな問題に対しては、
 一方が出した広告に対して、反対する側の反論権を認める。
②反論権を認めないという場合は、その新聞社は今後、そういう広告は掲載しない。

げんに、上の自衛隊の広告は、沖縄の2紙に掲載を拒否されたという記録が残っています。

(1960年代に民主主義の道具として解禁になった意見広告の灯は消したくないし、いまのままではカネ持ちの道具になってしまうし。意見広告そのもののあり方については、いずれまた)
(それにしても、原発推進のような広告を、広告の制作者が個人の信条でつくるのは自由ですが、広告代理店が作ってはいけないんじゃないかと、ぼくは思います)


facebookページ 天野祐吉の「広告かわら版」






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