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身の丈サイズのことば [ことばの元気学]

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「社員は15人までがいい」
と、昔、建築家の菊竹清訓さんが言っていました。
仕事場のメンバーが15人までなら、お互いにそれぞれの顔がよく見える。でも、それが50人、100人になっていったら、ひとりひとりの顔なんか見えなくなってしまう、というんですね。
なるほど、いいこと言うなあと思って、「広告批評」の仕事場は、ずっと15人を越えないようにしてきました。(貧乏会社だからそれ以上はやとえなかったというほうが正しい?)
ま、何人くらいがいいかというのは、業種や仕事の中身によって違うと思いますが、たしかにメンバーが100人をこえたら、知らない顔も出てくる。これが1000人、いや1万人なんてことになったら、道で会ってもまったくわからない人のほうがほとんどになりますよね。

話はとつぜん飛びますが、そうなると、リーダーはメンバーのクビも切りやすくなります。1万人の会社で100人のクビを切るなんていうのは、別にたいした痛みは感じないんじゃないでしょうか。それが「ハケン」だったりしたら、なおのことです。

「巨大化したものは暴力化」するというのは、たとえばそういうことですね。そこでは、メンバーは、切っても血の出る「人間」じゃない。ただの「数字」なんです。

「スモール・イズ・ビューティフル」のシュマッハーさんは、「巨大化→暴力化」の道をまっしぐらに走ってきた20世紀にサヨナラするためには、すべてを「身の丈サイズ」でとらえ直すことが必要だ、と言いました。とくに「身の丈サイズのテクノロジー」と「身の丈サイズの経済システム」を説くと同時に、その具体的・実践的なモデルづくりを開発途上国でやってきたのです。

当時は多くの人から絵空事と言われたこの考えも、いまはすごいリアリティを持つようになりました。この大不況を乗り越えたらまた元に戻るのではなく、この大不況を機に、巨大化した経済社会のシステムを身の丈サイズに「チェンジ」することが、いちばん大切なんじゃないかという気がします。

というわけで、この際、アソーさんにも、「身の丈サイズの言葉」でしゃべることをおすすめしたい。ちゃんと読めないような漢字を使わなくても、
「未曾有の」→「めったにない」「あっとおどろく」
「踏襲」→「そのまんまひきつぐ」
「頻繁」→「しょっちゅう」「ちょういちょい」
でいいじゃないですか。

自分でも読めない漢字を使うということは、実感なしにしゃべっているのと同じことです。
読み違えがモンダイなんじゃない。実感のともなわない言葉は決して相手に届かない。そこがモンダイなんですよ、アソーさん。
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宇

いつも楽しく読んでいます。

寒い寒いツンドラではコケのみが育ち,大きな葉を持つ植物は育たないようです。
大きく成長しようとせず,コケのように生きる。
厳しく冷え込んだ経済の下で育つのは,コケのような人たちなのかもしれません。
by (2009-01-18 02:49) 

銀鏡反応

よく雑誌とかを見ると、良くわからない外来語や漢語が出て来ることがあります。

私達庶民には、何を意味するのか、まったくわからない言葉に、戸惑うことも少なくありません。そういう言葉は、庶民にとって実感の沸かない言葉が多いです。

例えば「コンテクスト」という語なんて、ん???コンクリートの仲間?と思い違いをしてしまうほどです。どういうことなのか、意味もわからなければ、実感も沸きません。

我々に分かりやすくて、実感の沸く言葉を、政治家もマスコミも、もっと多く使うべきですね。


by 銀鏡反応 (2009-01-18 13:45) 

とくさん

伝えようというのと伝わることが異なることを
麻生さんや政治家は学んでないのでしょうか?
今は学生も、プレゼンの大切さとか、面談での言葉の
大切さを時間をかけて学んでます。
きっと、今まで一方的に演説?し、偏差値の高い
官僚の言葉をそのまま使い、ドブ板選挙で握手だけ
してきたせいでしょうね。
学校の先生も、お医者さんの先生も、対話を大事にしてるのに、、、。
政治は公器、二代目、三代目にはわからないのかなあ。
by とくさん (2009-01-18 15:37) 

あかみどり

このところ話題の定額(低額?)給付金の、”2兆円”。
もちろん”2兆円”の読みも意味も分かってはいますが、
何だかピンとこないというか、全然身の丈な金額ではないのに、
国会議員はもちろん、ボクでさえ平気で「この2兆円で・・・」
なんて話をしていたことにふと気づきました。

何か、怖いなあ・・・。
by あかみどり (2009-01-19 10:00) 

ほやへ

身の丈サイズの言葉で話せる人が、本当は一番「頭のいい人」

なのでしょうね。若いころは漢語を交ぜて話して、少しばかり粋がって

いたこともありましたが(恥ずかしい)、最近は自分にも人にもわかる

言葉を使うよう心がけています。

「自分」の言葉で伝えるほうが、難しいけれど、実はずっと誠実だし

気分がいいということがわかったからです。


ところで、身の丈サイズに「チェンジ」したら、夜は、「もの皆眠る」昔の

夜に戻ることができるでしょうか。

身の丈サイズとは、「人が人らしく生きるサイズ」なのかもしれない

と思いました。
by ほやへ (2009-01-19 22:47) 

たぬきひとで

15人以下の会社ばかり3社ほどで働いてきた身としては、実感がある話ですねえ。

けど、そんな少ない人数でも、経営者が全員をちゃんと見渡せていたかと言うと、かなり疑問です。

まあ、下から見る目と、上から見る目では見えるものも違うんでしょうが…。

人が集まるだけならいいけど、「組織」とか言い始めると難しくなるような気がしますねえ。
by たぬきひとで (2009-01-20 12:58) 

cnh

こんにちは、いつも応援しています。
今日はご挨拶だけしにきました。

ブログの更新楽しみにしています!

by cnh (2009-01-21 11:02) 

リック

「とうしゅう」も「ひんぱん」も、アソーさんの語彙にはなかったのでしょうか。

語彙が貧しいと、思考力も乏しい (語彙が豊富なほど、深い思考ができるようになる) と、聞いたことがあります。

語彙が貧しい人に、豊かな思考・発想 (適切な政策) を期待することが、そもそも無理なのかもしれません。
by リック (2009-01-21 11:17) 

gillman

ぼくが会社に務めている時にもいくつかプロジェクトをしましたが、やはり人数が多すぎると難しいですね。少人数で意思疎通を緊密にしてやる方がうまくいきますね。少数精鋭といいますが、少数にすると精鋭にならざるを得ないという感じがします。国会議員こそ、本来少数精鋭ではないでしょうか。
私事ですが、一昨日嗅覚回復の手術をしました。
by gillman (2009-01-21 21:02) 

あまの

「宇」さん。
日本民族の特性は、たしかに地理的・環境的・その他いろいろ的条件からつくられたものでしょうね。たしかに湿気が多いから、コケにも関係が深いかも。

「銀鏡反応」さん。
政治家ご愛用の難解かつ抽象的なことばの「言い換え辞典」を作ったら面白いでしょうね。

「とくさん」さん。
2代目がダメなことは、世界共通。ブッシュさんもちゃんと立証してくれましたね。

「あかみどり」さん。
実感が持てなくなる金額って、いくらくらいかなあ。人によって違うでしょうが、ぼくは1000万、いや、500万かなあ。なんにせよ、ちいせえちいせえ。

「ほやへ」さん。
ぼくの実感では、日本人も1950年代の前半までは、まだ身の丈サイズの暮らしをしていたような気がします。60年代になって、急に手足が伸び始め、70年代に身の程知らずの巨人になり、80年代になって身も心もからっぽの虚人になりました。

「たぬきひとで」さん。
たしかに。15人以下の会社では、トップの人の器量次第で、天地の差が生まれてくる。むずかしいところです。

「リック」さん。
語彙は少なくても、言葉の豊かな人はいます。言葉の数より、質ですね、大切なのは。

「gillman」さん。
いまの世の中の悪臭を感じられなくなったら困ります。くれぐれもお大事に。







by あまの (2009-01-23 02:06) 

珠

読み間違えると「あそうさん、しちゃった~」と言ってます。
日本の国も「大国」じゃなくてもいい。身の丈にあったつましく穏やかな暮らしのできる国の方がいいです。

by 珠 (2009-01-27 00:24) 

uターン転職

会社が大きくなっていくのをただ漠然と喜んでいてはいけないのでしょうね。

リスクを想定して、舵を振らないと大変なことになるということなのでしょうか?

先日、何かの記事で芸人Iさんが、自分自身のギャラが高額にならないように敢えて抑えていたという記事をみました。

そういった危機意識を一人一人が持てていればもう少し現状は違ったのかもしれませんよね・・・
by uターン転職 (2009-01-31 00:32) 

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