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唱歌と讃美歌の親密な関係について [ことばの元気学]

第5夜.jpg

みんなに親しまれた歌や民謡の旋律だけ借りて、その中に伝えたいメッセージを詰め込む。
「軒を借りて母屋をとる」というちゃっかり方式を使ったのは、実は、明治の唱歌だけではない。

讃美歌がそうなんだ。

讃美歌って、すごくたくさんあるけれど、その大半は、讃美歌のためにわざわざ作曲したものじゃない。既製の曲の借り物が多いんじゃないかな。
前回、小学唱歌「見渡せば」の原曲は、ルソーのものだと話したけれど、その曲は「グリーンヴィル」というタイトルで讃美歌にもなっている。ほかにも、讃美歌には、ヨーロッパの各地で親しまれてきた歌や民謡の旋律を借用したものがすごく多いんだよね。

つまり、讃美歌は、だれにも親しまれるような、おぼえやすい旋律を使う。で、その中に「神の力」を称えるメッセージを詰め込んでいるというわけ。
だもんで、以前からぼくは讃美歌を、「神の存在を売るCMソング」だといってきた。で、敬虔なクリスチャンの方々から、「讃美歌をCMソングだなんて、このバチ当たりが!」と、きついお叱りを受けてきた。

が、そのデンでいけば、明治の小学唱歌もまた、CMソングである。讃美歌と同じく、曲は外国の民謡などからの借り物で、その入れ物の中に、「国」を称えるメッセージを詰め込んだのが明治唱歌だ。つまり、日本って、こんないい国だぞと讃美して、愛郷心や愛国心を育てていこうというのが、唱歌のねらいである。

そう、讃美歌が「神」の賛美なら、唱歌は「国」の賛美。どっちも讃美の歌であり、CMソングである、というわけね。

ちなみに、「蛍の光」の歌詞を見てみようか。
有名なスコットランド民謡の「オールド・ラング・ザイン」に勝手につけたその歌詞は、卒業式の定番曲としてよく知られている。だから、いまさら紹介するまでもないと思うが、歌詞の3番と4番を知る人は少ないんじゃないだろうか。

(3番)
筑紫のきわみ みちの奥
海山遠く へだつとも
その真心は へだてなく
ひとつにつくせ 国のため

(4番)
千島の奥も 沖縄も
八洲(やしま)のうちの 守りなり
いたらん国に いさおしく
つとめよわが背 つつがなく

これって、かなりロコツだよね。それに、卒業式にはそぐわない。で、いまは2番までしか生き残っていないのだが、いやあ、生き残ってくれなくてよかったねえ。

(写真は、伊予がすりを着て唱歌を歌ってくれた松山少年少女合唱団の子たちと、その前でつまんない話をしているぼく。30人の合唱団が当夜歌ってくれたのは、「見渡せば」「蝶々」「蛍の光」「故郷の空」「埴生の宿」「荒城の月」「冬景色」「箱根八里」「しゃぼん玉飛んだ」「ふるさと」の10曲。どれもよかった。パチパチパチ!)

 






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とくさん

蛍の光の三番、四番、こわいもんありますね。

先週、久し振りに教会に行ったんですね、
私も子供たちも、幼稚園だけ、カトリックでしたが、、、。
高校の友人が歌いまして、
「クリスマス物語」ということで、いろいろ、聴きました。
フルートとの競演はたいしたもんでした!

キリストさま、お釈迦様、マホメット様、、、(多くの神様、仏様がいらっしゃいますが、すべてをご紹介できません、また、順位不同であります)
からコミュニケーション術で、学ぶことは多いです。「儲」けるは、「信者」
を!ですし、、、。「お許しください、神様、仏様」

社歌も、なかなかいいですよ、歌うと、みんなで合わせようとして、
集中力つきますし!
by とくさん (2008-12-23 05:41) 

あかみどり

あんこから唱歌、賛美歌ときてCMソングと、なるほど、なるほど。
そういえば校歌はその地域の自慢をしているものが多いですし、
合唱と肩肘張らなくても、野球の応援歌やコンサート、カラオケなどで
いっしょに歌う時の一体感もそれに通じているように思います。
「リンゴの歌」「上を向いて歩こう」「世界にひとつだけの花」・・・
時代のヒット曲って、大げさにいえば人生を讃美、肯定していますよね。

うろ覚えですが、かの有名なバッハは毎週日曜日に行われる
ミサのために月曜から土曜日までに曲を書いて、練習して、
リハーサルそして本番とそんなハードスケジュールな日々を過ごして
いた時期があったそうです。
子だくさんのバッハが家族を養なうという現実的な事実があったにせよ、家族のために神を讃える姿が妙に親近感を覚えたものです。
by あかみどり (2008-12-23 10:00) 

銀鏡反応

唱歌は「国」のCMソング、讃美歌は「神の存在を称える」CMソング…なるほど~!ということはどちらも一種の「うたう広告」というわけなんですね。

時折、夜中ラジオを聞いていて、唱歌が流れてくる時があるんですが、どれも何処か“その時代”の匂いを感じてしまいます。明治・大正の唱歌はその匂い、昭和の唱歌やCMソングは昭和の匂いが致します。
by 銀鏡反応 (2008-12-23 16:56) 

ここみ

初めまして(^-^)

お仕事がんばってくださいねぇ~(o^-')b

by ここみ (2008-12-24 22:47) 

gillman

思えばキリスト教って歌う宗教なんですよね。イスラムが偶像を配したのに対して宗教画などの美術とかも取り入れて、そういう意味ではCM上手な宗教なんですね。

三番の歌詞…筑紫さんを思い出してしまいました。あれ以来何を考えるにも比較の対象となる一つの軸を亡くしてしまったような…
 
by gillman (2008-12-25 08:00) 

根本久子

天野さん、こんにちは。ちょっと遅いメリークリスマス!

先月から、私が通っているキリスト教会のクリスマスの準備で忙しい二ヶ月間でした。聖歌隊のピアノ伴奏や、日曜礼拝の前にクリスマスソングをピアノで弾いたりで、かなりの数の曲を短期間に準備したんです。で、今年は教会で「Who is this child?」という曲がよく取り上げられていて、私も弾いたし聖歌隊も歌ったし子供達のパフォーマンスでも演奏されたのですが、この曲のメロディは「グリーンスリーブス」なんです。それで、私だけはいつも「グリーンスリーブス」と言っていました。イブの礼拝の前にやっと歌詞を読んだら、この世に生まれたばかりのイエスのことを「この子が救世主なの!?」と歌う、割とジーンとなる歌詞でした(笑)。

キリスト教が歌う宗教なのは、多分、聖書で「歌って楽器を演奏して踊って神を讃えなさいよ〜」と教えているからだと思います。ロック調の現代風の讃美歌もたくさんあるんですよ。あと、キリスト教がCM上手なのは、これも聖書で「教えを広めなさい、弟子をふやしなさい」って教えられているからかもしれません。イスラム教やユダヤ教は伝道しないですもんね。教えを伝えて信者を獲得するのと、商品の良さを広めて消費者の心を獲得するのと、考え方は一緒のような気がします。

天野さんがイエスが宣伝上手だったとおっしゃっていたのも、よく覚えています。スピーチも上手かったと思うし、コミュニケーションについてイエスに話が聞けたら面白いだろうなあ。天野さんの講演も、聴衆を引きつける魅力にあふれているよなあ、といつも思っていました。私もイブの礼拝でお話をしたのですが、天野さんの話す姿勢を真似してみました。壇上で話してるんだけど、聴衆の隣に座って世間話をしている感じというか。みなさん、かなり楽しんで聞いてくれたみたいです。

実はいま讃美歌(クラシックの静かな種類のです)のCDを買って帰って来たところで、ちょうど讃美歌に触れてあったので、楽しくなって思いつくままにダラダラ書いてしまいました。よい年末年始をお過ごしください!
by 根本久子 (2008-12-27 15:28) 

あかみどり

NHK教育を見ていたら、天野さんが「YOU」をもう一度見たい、
そんなことをおっしゃっていましたね。ボクもまた見たいです。

2008年はなにやら波乱の年でしたが、そんな中でもこのブログに
めぐり合えたのが今年良かったことのひとつです。

それでは、良いお年を。

by あかみどり (2008-12-31 10:02) 

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