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テレビのビョーキ [ことばの元気学]

なにしろ「後期高齢者」なもんで、つい話が古くなる。
「モンティパイソン」なんて言ったって、知らない人が多いですよね、いまは。なにしろ、30年前のイギリスのテレビ番組ですから。吹き替えの日本版が放映されたのは1976年のテレビ東京。それだけじゃ誰も見てくれないだろうというんで、30分の本編の前後にタモリさん(テレビ初出演)たちが出て、1時間弱の番組にしていました。

2モンティ.jpg

これは、イギリスの個性的なコメディグループが繰り広げる「おバカ番組」で、30分の間にナンセンスなギャグやコントが、速射砲のようなスピードで飛び出してくる。そのコントとコントをつなぐアニメーションがまた斬新で面白かったのですが、それを担当していたのは、いまは映画監督として著名なテリー・ギリアムでした。

政治問題から世相風俗に至るまで、硬直した権威主義やイギリス社会の保守性などをとことん攻撃するカゲキな内容なのですが、イギリスならではのすぐれたユーモアセンスで味付けされていて、滑稽にして痛快、いま思い出しても吹き出してしまうようなものばかりです。

シリー2.jpg

とくにぼくが好きだったものの一つは、「バカ歩き省」というコントでした。
これは、イギリスに「バカ歩き省」というお役所があって(もちろんウソですが)、そこの役人たちはみんな、ふつうに歩いてはいけないことになっているんですね。で、ユニットメンバーの一人ジョン・クリーズが、街の中でも役所でも足を前方に高く蹴りあげて歩くという「バカ歩き」をしているという、言ってみればそれだけの話なんですが、あまりのばからしさに吹き出さずにはいられない。で、そんなばかばかしさの向こうで、役所というものの形式主義や無能ぶりを痛烈にからかっているわけですね。
日本の国土交通省あたりにもきっとこういう人がいて、居酒屋タクシーの乗り場まで「バカ歩き」をしてるんじゃないかという気がします。

シリーa.gif

ところで、これはBBCの制作番組です。BBCといえば、イギリスの国営テレビですね。その国営テレビで、こうしたカゲキな政治批判ができる。何よりもそこがすごいところだと、ぼくは思います。
それにくらべると、いまの日本のテレビは、ジャーナリズム産業であることを、ほとんど放棄してしまっている。ジャーナリズムの基本的な機能は「見張り」の機能と「批評」の機能ですが、そんなことをすっかり忘れて、99%娯楽産業になってしまっているように見えます。とくに民放は、吉本興業の支店みたいになってしまっている。

ひどい話です。
しかも、そのことにテレビ局は、気づいていないフシがあります。
これは完全なビョーキです。
その具体的な症状について書くつもりでしたが、おなかが空いてしまったので、近くのラーメン屋まで「バカ歩き」で行ってきます。

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コメント 10

ヘロいん

私は放送当時生まれておりませんが、モンティ・パイソンは好きです。キングス・イングリッシュの勉強になるかなと思って観てみたところ、詩的で流麗なバカトークの応酬、シニカルな笑いにすっかりやられてしまいました。
私はルピナスの花を見かけると、いまだに黒マントの盗賊を思い出します。

残念ながら民放さんは今やパチ屋・金融業者のシモベでしょうから、毎年のように「両親がパチンコに興じる間に、夏の駐車場で幼児が衰弱死する事件」が発生しても「射幸心をあおるパチンコが悪い」などとは絶対に言わないわけです。しかしせめて金銭関係のない公共放送さんは、もう少し過激になって頂きたいところです。
by ヘロいん (2008-06-30 08:33) 

rio

こんにちは。

「テレビ局は気づいていない」というところが悩ましいですね。スポンサーの意向とテレビ局の無策とどっちが先なのかと思ってましたが。。。

先日、「TBSのブロードキャストが終了して、後継はバラエティの予定」というニュースがあって驚きました。ブロードキャストのぜひはともかく、さらにバラエティを増やすのかと…。TBSはいまや4番目に甘んじているようですが、てこ入れ策が間違っている気がします。
by rio (2008-06-30 09:13) 

あかみどり

わははは。バカ歩き、笑える~。
「モンティ・パイソン」、リアルタイムでは知らないけれど、数年前に
一度NHKの深夜枠で見たような気がします。
「ビーン」「レッドドワーフ号」は後にその枠で放送されたと思いますが、
ああいうイギリスの笑いも大好きです。

こちらは笑えませんが、先日の秋葉原の事件のニュースで若いレポーターが「東海林です・・・」みたいな雰囲気で現場での状況をレポートしていました。
でも、それNHKのニュースなんですよね。NHKでさえそんな風に
なっているのが、とても気になります。

by あかみどり (2008-06-30 11:51) 

jako

モンティパイソンってドリカムの歌に出てきた人ですよね?
そっかぁこういう感じの喜劇をする人だったんですね
by jako (2008-07-01 22:04) 

まちゃ

確かに皆さんの意見と同じです。 やはり各々意見は分かれると思うのですが、本質を追求するにはなかなか難しいでしょう。 正しいものさしが必要だし、なにが正しいものさしなのか、個人で価値観が違いますからね。
by まちゃ (2008-07-01 22:05) 

tksm

こんばんは、はじめまして。

NHKがこういう番組を作ってくれたら、テレビを見るようになると思うのですが…。「おもしろい」という言葉の意味が平坦なものになってしまっていて、おもしろみがないように思ってしまったりもします。

スパム・メールの語源も「モンティパイソン」なんですね。なつかしく、そして勉強になりました。ありがとうございます。
by tksm (2008-07-01 22:59) 

gillman

地上波民放のバラエティと称する横並びの体たらくを見ているとため息が出ます。元来、多彩なとか、多様なという意味であるバラエティーがその意味に反する皮肉のように均一でつまらないものになっていますね。好きだったテレビがジャーナリズムの本質も放棄し日々腐ってゆくのが何とも哀しいです。

by gillman (2008-07-01 23:01) 

とくさん

テレビは、穴埋め状態で、
テレビの画面を黒くしないために、番組をつくっている、
っていう感じはします。

じっくり作れる人がいなくなってしまったのでしょうか。
既得権が、なんでも腐らせるのかもしれません。
by とくさん (2008-07-02 00:15) 

しいたけ

こんばんは。

テレビの字幕は、(どうでもいい文は特に)煩わしい時がありますね。
テレビとは少し違うのですが、漢字の平易化(平仮名化?)に違和感を感じています。
たとえそれが子どもにも読みやすいように、という配慮であるならばルビを振ればいいのです。


新聞などでも最近よく見るのですが、やはり何だか収まりが悪いような気がしますし、まぬけな感じ。

いい例を思い付けないのですが[あせあせ(飛び散る汗)]

いきなり長文&私見失礼しました。
by しいたけ (2008-07-04 03:12) 

あまの

「ヘロいん」さん。
明治のジャーナリズムは奔放過激、「中立公正」病なんてへんなビョーキにかかることもなく、権力と戦いました。昔むかしの話です。

「rio」さん。
テレビのジャーナリズム離れはとどまるところを知りませんね。ブログ・ジャーナリズムの時代が近そうです。

「あかみどり」さん。
テレビレポーターの言葉って、なんなんでしょうね。家に帰っても、あんな調子でしゃべっているんでしょうか。

「jako」さん。
ドリカムの歌に出てくるんですか。そっかぁ知らなかった。

「マチャ」さん。
たしかに、正しさのものさしなんてものがあったら、裁判員制度なんかいりませんよね。

「tksm」さん。
本当に、「面白い」という言葉は奥が深くて面白いですね。

「gillman」さん。
あんなにジャーナリズムとしての可能性に富んだメディアはないのに、もったいないというか、アホらしいというか。

「とくさん」さん。
こんなことをやっていると、「コンビニよりテレビの深夜放送を自粛しろ」という声が出てきそうで。

「しいたけ」さん。
同感です。テレビの字幕の乱用は、テレビの自殺です。















by あまの (2008-07-04 16:44) 

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