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つぶあんの逆襲 [ことばの元気学]

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NHKの「スタジオパークから~」で、視聴者の方から150通近いご意見をいただきました。ぜんぶはとても紹介しきれませんので、おもにつぶあん派の人たちの声をお伝えしたいと思います。(いずれも抜粋) いざ!

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●亡くなった父は断然つぶあん派でブリーフ派でした。こしあんというのは、残った粒あんをこしてるんじゃないか、というのが持論でした。娘の私はトランクスもブリーフもはきませんが、つぶあん好きで毎日ジーンズの野性派です。(名古屋・タンポポさん・30代)

●私たち夫婦はまったくのつぶあん派です。「こしあんは素材的にブレンドものがあり、小豆そのものを食べれるのはつぶあんだ!」と、主人は断言しています。素材そのものを大切にする人はつぶあん派で、真の味を知っている人ではないでしょうか。(寿司屋のたかちゃん)

●私が子どものころは家であんこを作っていましたが、よい小豆でつぶあんを作り、屑の小豆を叩いてこしあんを作っていた祖母のことを思い出しました。そんなわけで、きょうまで、つぶあんは上等、こしあんは安物と思っていました。(秋岡・昭和10年生れ)

●戦後、こしあんはまぜものが多く、味が悪かった。それに引きかえ、つぶあんはまぜものが入れづらく本物?との考えから、つぶあんを好む方が多くなったものである。ちなみに私は、昭和20年代、生菓子修業をしていた者である。(上野忠男さん)

●つぶあんは、野性的というより、自然派志向です。こしあんは作る時に皮がゴミになりますが、つぶあんは全部使うので、とっても「エコ」です。あんこも、つぶあんのほうが栄養があり、皮をむかないぶん量も多くできます。(だから安い)。つぶあんは食感の素朴さを楽しめるし、さらに味に深みもあるのです。ちなみに、うちの主人はどちらでもいい派で、パンツも、トランクス・ブリーフ・ボクサーと、その日の気分によって使い分けています。(北海道・あちさん)

面白いですね。「自民と民主のどっちが好きか」なんて聞いたって、こんなに熱が入りませんよね。それだけこのモンダイは、くだらなくて、でも、奥が深い。
なお、「つぶあん派vsこしあん派」を分ける項目に、「梅が好きか桜が好きか」とか「耳あかが湿っているか乾いているか」を加えたらどうだ、というご意見もありました。
そして、こんなご意見も。

●私の父は無類のあんこ好きでしたが、春の彼岸にはつぶあんの牡丹餅、秋の彼岸にはこしあんのお萩と、時に応じて食べ分け、どちらの時も至福の表情でした。一枚の布で臨機応変に締め具合を変えられるふんどしを愛用していたせいでしょうか。(札幌市・粒餡好きのワイルドおばさん・50歳)

このお父さんは、とても正しい人です。実は、春は小豆がまだ水分を含んでいて柔らかいのでつぶあんに、それにくらべると、秋は小豆が固くなっているので、皮をむいてこしあんにするのが、昔の人たちの知恵だったんですね。つまり、四季それぞれにおいしく食べようとすると、このお父さんのようになるわけです。
もちろん、春にこしあん、秋につぶあんにしたってかまわない。ちなみに、牡丹餅もお萩も、季節によって呼び名が違うだけで、実体は同じものです。ついでに言うと、同じものを夏は「夜舟」、冬は「北の窓」と呼ぶこともあった。牡丹餅(お萩)の餅は杵でつかずにこねて作るので、「いつ搗いた(着いた)のかわからない=夜舟」、「搗き(月)が見えない=北の窓」というわけですね。昔の人は優雅ですね、ヒマだったんですね。

最後にもう一つ。「スタジオパークから~」の中で、四国の松山で過ごしたぼくの学生時代に、伊丹十三さんや大江健三郎さんがほぼ同期にいたという話が出たのですが、それにからんでこんなファックスをもらいました。

●こしあん派は洗練好みの弥生人、つぶあん派はごつごつした縄文人。伊丹十三さんはこしあん派、大江健三郎さんはつぶあん派、そして天野さんご自身は、こしあん派と見せて実はつぶあん派ではないかと、私はにらんでいます。(東京・野村利恵子さん)

やばい!

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ゆきよ

この番組、運よく観ることができたのですが、放送終わり頃の
「うちは二重焼き(?だったでしょうか)屋をやっていますが、つぶあん派とこしあん派で性格が違うことについては昔から気づいていました。」
という内容のFAXが一番強烈な印象でした。

昔、母が「何でも一つの仕事をずっとやってきた人には哲学がある」
と言っていたのを思い出しました。

あんこ屋さんにはあんこを通して見る世の中があるのだ、と感動しました。

あと、あんこと直接関係なくて恐縮ですが戦前・昭和10年代頃の世の中がどんな風だったか興味を持っているので、今度ブログでそんなことも取り上げて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
by ゆきよ (2008-04-26 22:17) 

heiza

こんにちは。

記事数100件目突入おめでとうございます♪
その番組(とても興味深く)見ていました。

そういえば小学生で、もしすむなら弥生時代か、縄文時代か、で別れ議論するという授業がありました。
私は弥生人派だったし今もそうなので、意外にも縄文派が多かったのが今でもはっきり憶えています。
番組中、その話が出たとき思わず膝を打ちました。
確かにそのような別れ方をしていたようでした。

私の父は(殆ど箇条の通りの)こしあん派でした
私はこしあん寄りなんですが、ちょっとばらばらとしています(泣
色々と変わったのかなぁ。おっしゃっておられるようにどんどん文化が行き来していますよね。
>つぶあんの逆襲
まさに今の時代そのものですよね。こしあんとつぶあん、これはもしかすると、
こしあん=リーダー(かエース?)・登録商標?、
つぶあん=トリックスター(かムードメーカー?)、トレードマーク?、
源平時代の梶原景時(この名前の由来でもあります)と源義経の関係なのかもしれませんね。
そう考えるとむかしっから?落語や歌舞伎でもそうですが、普段の生活に勧善懲悪やその逆の判官贔屓が嫌な人も目立ってきているだけなのかも(笑

未熟から成熟されたもの、でも最後の「やばさ」、天野さんがカラヤンの事を大好きなように、実はこしあんくんはつぶあんのことを羨ましがっているのかも?
どきっ

ちなみに黒澤明、特に七人の侍は大好きです(つぶあんタイプもこしあんタイプも出てくるしね♪)。

もしかしたらやっぱりつぶあんかもっ
by heiza (2008-04-27 00:26) 

てん

我が家では数年前まで俊の暮れに親兄弟一族があつまり、餅つきをしていました。お供え、伸し餅、大福、絡み餅を作りました。大福と絡みようの漉し餡はあるときから長男の嫁の私がつくるようになり、最初はざるで川をつぶしながら水の中に実を溶かしその水を晒しの袋に流し入れると漉し餡が形となって袋にたまるシステムになかなかなれず苦労したけれどだんだんに熟練してくると面倒な手順も面白くなりました。

夫の父は漉し餡派でつぶしは胸や気がすると嫌がりました。彼岸の牡丹餅も面倒でつぶし餡にするとしぶしぶやっと1個食べましたが。漉し餡だと大きさも小さくできることもあってパクパクたべました。

夫も餡子大好き人間ですが、餡子には」こだわりません。
我が息子も同様です。

そこで、三大の下着ですが、父は猿股、夫と息子はトランクスです。家ではこんな結果です。

しかし、餡子でこんなにお話がすすむなんて面白いですね。
人間が見えてきて楽しかったです。

どちらの餡子も味次第だと思うんですけど
by てん (2008-04-27 01:43) 

とくさん

こしあん派なのに、ブリーフ派であった、自分に迷いがス生じています。本来の自分は、こしあん派なのに、母にブリーフで矯正されていたのであろうか?と。あるいは、てんびん座故の、平衡感覚を保とうとする行動か?
パンツを、単身赴任中ですので、7年前から自分で買ってますが、やはり、ブリーフですね。jこれから、パンツ自分で、じゃなく、洗濯機で洗います。
by とくさん (2008-04-27 08:18) 

ピーコ

僕は「こしあん派」で「トランクス」をはいています。
テレビをたまたま昼休憩に見ていて、ナントもバカげた話だなぁ~と思っていたんですが、昼食後何気なしに近くの人に聞いて周ったら盛り上がりました!こんなことでこんなにも盛り上がるなんて!!
天野さん、参りました!

by ピーコ (2008-04-27 16:44) 

rio

ツブとコシの「どっちが上等か」論争も面白いですね。

玄米、胚芽米、白米、あるいは純米、吟醸、大吟醸のように、ものづくりの基本から言えば、そのままを使うツブよりも手間をかけるコシのほうが高級だったと想像します…が、戦中・戦後のモノのない時代に入れ替わってしまったんでしょうか。


by rio (2008-04-28 11:32) 

あまの

「ゆきよ」さん。
昭和10年代には、さすが後期高齢者のぼくも幼児でしたが、なるべくご期待にそうようにします。

「heiza」さん。
そう。ぼくの中にもつぶあんが同居していて、「たまにはたいやき食いてえなあ」なんてぼやいています。つまり、誰の中にも、こしあん君とつぶあん君が同居しているんですね。で、こしあん君の力が強い人はこしあん派、つぶあん君のほうが元気な人はつぶあん派なんだろうと思います。で、その比率はいつも一定というわけじゃない。そこが面白いところでもあります。

「てん」さん。
たしかに、味次第です。こしあん派のぼくも、まずいこしあんよりは、おいしいつぶあんのほうがいい。でも、ぼくはお父さんと同じで、つぶあんは胃にもたれるというか、胸やけするというか、そんな感じがするんですね。

「とくさん」さん。
ブリーフも近頃はボクサーブリーフがハヤリのようですね。どんなものか、ぼくも一度はいてみたいと思いますが、やっぱりやめときます。

「ピーコ」さん。
そういうピーコさんは、こし派ですかつぶ派ですか。

「rio」さん。
そうですね。戦争で変わったかも知れません。もうひとつ考えられるのは、若者文化がバクハツした60年代の終わりごろですね。ジーパン文化の攻勢に、おとな文化が敗れたときから、世の中、すっかり変わりました。








by あまの (2008-05-02 00:49) 

まったりユキ

先日、天野さんのカラヤンシリーズ2を再放送で拝見し、他を見逃していたことが悔やまれてなりません。澄んだオケの音を聴いてると、カラヤンのCDが全部欲しくなってきました。すっかりブログの盛り上がりに出遅れてますが、博多から粒あんに2票です。

私はぜんざいの粒あん派。といっても肉じゃがにしろ何でも煮崩れかけ、具沢山でとろみや濁りがある方が好き。温泉卵なんてたまりません。(ちょっと違う?) ホクっと崩れながら濃厚な味わい。新しいものの中にも古いものを感じる、伝統の中にも今にない斬新さを見つける。どちらも味わいたいという欲張りや贅沢でしょうか。

ちなみに彼は歯応えのある粒あん派。そして普段は自由な空間のあるトランクス派で、勝負下着は気合を入れたブリーフ派なんだそう。でも私はブリーブ姿を見たことがありません。私は勝負する相手ではなかったんでしょうか。そんな彼とはとても長い春が続いています・・・。
by まったりユキ (2008-06-15 16:30) 

初めての株

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 初めての株 (2014-05-14 12:36) 

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