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馬鹿の品格9 [ことばの元気学]

きのう、久しぶりに、NHKの「スタジオパークからこんにちわ」という番組に遊びに行きました。
で、よせばいいのに、また「こしあんかつぶあんか」という馬鹿話をして、司会の武内陶子さんをあきれさせてきました。
それにしても、おととし、このブログで散々おしゃべりしたテーマですが、「あなたはこしあん派かつぶあん派か」ということに答えてくださった視聴者の方からたくさんメールやファックスをいただいたことにびっくりしました。15人くらいしか見ていないと思っていたのに、NHKってすごいんですね。
で、その結果をもとに、次回から少しまた、「あんこ噺」をしようかなと思っています。

2008041200100000.jpg

ところで、仕事柄、ぼくは「後期高齢者」になる今日までに、海外のテレビCMをたくさん見てきました。日本と同じで、どうしようもないものが多いんですが、やはり、キラリと光るものもある。で、その中でいちばん好きなものをあげるとしたら、これなんですね。もう20年くらい前に作られた、イギリスのキッチンタオルのCMです。

出てくるのは「後期高齢者」の老嬢二人。二人暮らしの姉妹が、ひっそり食事をしているシーンから始まります。
と、とつぜん、二人がニヤニヤしながら目くばせをする。と思ったら、片方のおばあさんが、食べかけの料理をわざとテーブルにこぼすんです。
その一瞬を待ちかねたように、大声をあげて立ち上がる二人。
キャッキャッとはしゃぎながら、二人は先を争ってペーパータオルをとりにキッチンへ走ります。
で、こぼれた料理をぺーパータオルで丁寧に拭き取ると、何事もなかったかのように二人はまた食事を始めるのですが、しばらくするとまた目くばせをして、こんどは料理をフォークに乗せてピュッと壁に飛ばす。
で、またもやキャッキャッと叫びながらキッチンへ……。
ナレーションはこうです。「エセルとブレンダは、まじめなおばあさんでした。ただし、新しいキッチンタオルを買うまでは。このタオルはとてもキレイに拭けるので、つい掃除をしたくなるんです」

思わず笑ってしまうCMなんですが、笑ったあとの口の中に、なんともいえない苦い味が残る。人によっては、老人を笑いものにしていると怒る人もいるでしょうが、ぼくはそうは思いません。こんなことでしか楽しみを持てない老人もいるんだということを、このCMの作り手は苦々しい思いをこめて言いたかったんじゃないでしょうか。こっちの口の中に残るのは、その苦味です。
それと、この二人のおばあさんが、なかなかのヤリ手というか、したたかに見えるところも、救いになっているように思います。さすがイギリス、ユーモアの本家ですね。江戸の「洒落」とイギリスの「ユーモア」。この二つをくらべてみると、いろいろ面白いことが見えてくるのですが、それはまたいずれ。

それにしても、こういう老人の「深い孤独」に、ちょっとでも想像力が働く人なら、「後期高齢者」なんて言葉を平気で使えるはずがないと、ぼくは思います。
そんな言葉の問題じゃない、医療制度の中身が問題なんだという人が、それにしても多いのにはがっかりです。制度を改善しても、名前を変えなかったら、こういう無神経さは生き残る。そういう体質をつぶさなかったら、実は何も変わりはしないんです。(後期高齢者はしつこい)
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ハイジママ

まだ、後期高齢者には、早い私ですが~いずれ味わう「深い孤独」、すごく想像が出来ます。早い話が豊かな国になって「孤独」な人は増えているのが、今の日本の現状なのでしょう。
ところで、天野さんの「カラヤン談義」NHKの「知るを楽しむ」(火曜日)楽しみにしております。カラヤンを心から愛する天野さんらしい解説、すごく分かりやすくて良いですよ。そのまま、その感性、カラヤン=天野さん=私、という順序で、そのまま戴いております。
by ハイジママ (2008-04-16 23:13) 

わかば

大老、スタジオパーク、大変楽しく拝見しました。
といっても、5分ほど経過した途中から…
新聞をきちんと見ておけば良かったです(>_<)
たまには、休みのお昼からNHKを見るのも楽しいものですね。
コメントを竹内さんに読んでもらえた時は、思わず、母に電話をしてしまいました(^_^;A
それにしても、ほんとに、ことばって大切だなと思いました。
「むかつく」イコール「ガラガラガッシャーン」というシャッターの閉まるような拒絶だということ、思わず言ってしまうので、気をつけたいと思います。
by わかば (2008-04-17 00:17) 

とくさん

えっ、スタジオパークに出演されたのですか、録画しておけばよかった、、、。母が、「後期高齢者になったんよ。」と、笑いながら、安っぽくなったという健康保険を見せてくれたのですが、彼女もムカついてました。
スタジオパークは、大好きな番組です。と言っても、サラリーマンの私は、土曜、たまに見てるだけですが、ウィークデーは、武内さんが司会されてるんですね。生番組の迫力があります。親父の四十九日で休みを取って、松山に帰りました時、爆笑問題の大田さんが、松山出身の武内さんを困らせているのを見て、生番組は最高だとあらためて思いました。天野さんの知的な暴走ぶりを録画しとけばよかった。
by とくさん (2008-04-17 01:58) 

江戸通

お早うござい。こんち、朝から良い話きいてご機嫌だねえ。お日様とお月様と雷様の話は、良く知られている話だが、ちょいと足りねえよ。朝宿の者が言うにゃあ。「お二人とも、早い時刻に朝立ちなさいました」 と言う。
この「朝立ち」が話しの 前打ち となって後の夕立が生きてくるてえわけ。
うなぎの話も面白いねえ。そして最後に 「宇が凪ぎっているので、当分未だ昇る」と 落ちが付く。 宇とは大空・宇宙とも言うねえ。凪ぎとは静かに落ち着いている様。うなぎ に引っ掛けて洒落てるねえ.  

by 江戸通 (2008-04-17 15:02) 

rio

こんにちは。

イギリス人って年齢にかかわらず、親子兄弟姉妹親戚友人でしょっちゅう行き来して遊んでますよね。そこに人生の価値を置いているというか。
その辺の雰囲気をすくいあげたのかなとも感じるのですが…現物を見ていないのに生意気言ってすみません。これが日本の老姉妹なら…鬼気迫るものを感じてしまいそうです。

福田首相が言った「長寿医療制度」もしっくりきませんね。政府は医療費支出の増大を「長寿」のせいにして(←統計的な根拠はないとテレビで批判されてましたが)、「後期高齢者医療制度」という名前の新制度を作ったのでしょうから、それをおためごかしに「長寿」って言い換えられてもなあ、と思ってます。
by rio (2008-04-18 03:36) 

gillman

 サイモンとガーファンクルのアルバムに「Bookend」というのがあります。僕の大好きなアルバムですが、公園のベンチの両端に座っている二人の老人が、まるでブックエンドのよう。深い老人の孤独をうたったアルバムでした。
 大昔、ドイツでも真冬の寒い時期に公園のベンチに座っている老人をよく見かけました。人影を見るために座っていたのです。誰かに会わないかと。長生きして、「こんなに生き延びてしまった」と思わせるような社会は何かがおかしいのですね。

by gillman (2008-04-18 22:01) 

あかみどり

何かの本で読みました。
ベルリンフィルの人がいうには、西ドイツよりも東ドイツのトライアングルのほうが音色が良いのだそうです。
東ドイツのものは(当時の技術的な問題で)不純物の混ざった鉄が
使われていて、均一の音が出ないのがその理由です。
人はそうした均一でない複雑な音を良い音と感じるようなのです。

そのエピソードを読んで、たとえば老人、老人の中でも75歳からは
後期とか事務的に細かく均一に区別してしまう世の中ははたして、
人の心に響くようなものになるのだろうか、なんて思ったわけです。

好き嫌いはともかく、こしあんしか認めない、ブリーフしか認めない
なんて、せこい世の中はつまらないですよね。ちなみにボクは
つぶあん派でトランクス派ですが、こしあんだって好きだし子供の
時はブリーフでした。

by あかみどり (2008-04-19 09:14) 

発電藷

このコマーシャル、一度見たことがあるのですが、あぁ、なるほど。と、そのときに感じた違和感の意味を気づかせて頂きました。
読売新聞の編集委員の芥川氏が記事の中で、ぼんやりと感じていたものがことばによって鮮明にされていくのはなんともすがすがしい、というようなことをおっしゃってたような記憶があるのですが、そのすがすがしさと、内容ゆえの何か気持ちの悪い感覚を同時に覚えました。

天野さんのブログを拝読するようになってから、広告の作り手がけっして、商業的効果だけのために広告を作るのではないということに気づかされました。広告の裏まで見る目を涵養したいなと感じています。
by 発電藷 (2008-04-19 10:25) 

楓○

ちょっと横道ですが、25歳になる息子が
「後期高齢者ってどういう意味?」と、言ってました。
説明したら「ますます意味が分からんなあ。ま、俺の年代は後期になる前にお迎えがくると思うけど」ですって。
ほとんどの人が「後期高齢」という言葉に違和感を感じてるみたいです。少なくとも私の周りの人はそうです。

ところで、お年寄り(特に一人暮らしなど)は孤独なものだと考えてしまいがちなことは、いかがなものかと思うんですが・・・。
案外、一人を楽しんでいらっしゃる方もおられるのではないかと私は思っています。
私は、自分がひとりになって毎日好きなように過ごすことを今から楽しみにしています。今までの人生で一人で生活したのは半年ほどなんです。いつも誰か=家族と一緒です。今も。これは、とても幸せなことだと感じています。だから、ひとりで好きなように・・なんて贅沢だと思うんですが、死ぬ前の数年間くらい、わがまま言っても罰は当たらないかな?(笑)もちろん、そのためには、健康が第一条件ですから身体には気を付けています。持病もありますし。
それで、ぽっくり旅立ちたいです。
ある日、嫁が来てみたら「ばあちゃん、死んでた!」というのが理想なんです(笑)この望みさえ叶えば、お国が私を「後期」と呼ぼうが「前期」と呼ぼうが、好きなようにして下さいって思っています。
そんなの関係ね〜!ごーいんぐまいうぇい〜〜〜♪です(笑)

ところで、私はつぶあん派ですが「上用饅頭」は絶対こしあんです。
by 楓○ (2008-04-20 23:52) 

あまの

「ハイジママ」さん。
トリックスターというのは、秩序をひっかきまわすいたずら者ですが、カラヤンのそんな面が、ぼくは大好きです。

「わかば」さん。
ぼくもよく「むかつく」んですよ。そのたびに、そういう言葉をぼくの中から
引きずり出して、踏みつぶすようにしていますが、なかなか。

「とくさん」さん。
ありがとう。でも、「知的暴走」なんて、ぼくにはとても。「チセイ」には「知性」と「痴性」と「稚性」がある、と言った人がいますが、ぼくのはもっぱら2番目のやつです。

「江戸通」さん。
なるほど、「朝立ち」ですか。ますます面白くなりますね。ご教示、ありがとう。

「rio」さん。
医療費の増大を年寄りに「しわよせ」というのは、洒落になりますね。おあげで、ぼくら年寄りは医療制度のしわよせにあってもみくちゃになり、ますますしわくちゃになるってわけです。

「gillman」さん。
思い出しました、「Bookend」。あれを聴いたときは、向こうに見えた風景が、いまは目の前にあるって感じです。もう一回、聴いてみます。

「あかみどり」さん。
いろんな人がいるから世の中は面白い。で、それぞれに、自分が正しいと思っているところがおかしいですね。

「発電藷」さん。
たしかに、なにか割りきれない後味が残るCMですね。でも、きちんと割り切れてしまう整数型のものより、こういう無理数型のものほうが面白い。川崎徹さんのCMは、みんなそうでした。

「楓○」さん。
老年になって、たいていの人は「孤独」と向き合うことになる。でも、「孤独」を見つめて、「孤独」を楽しめる人もいるんだと思います。つまり、「孤独」そのものは、いいものでも悪いものでもない、モンダイは、それと向き合う人間のありようなんでしょうね。















by あまの (2008-04-21 12:09) 

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