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餞別の味 [ことばの元気学]

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えーとですね、「広告批評」が終わるというんで、いま、あちこちの本屋さんで、「広告批評バックナンバーフェア」というのをやってくれています。
ここ、恵比寿アトレの有隣堂でも、入口にずらっとバックナンバーを並べて、派手にやってくれていました。
その前で、重厚そうなおじさんがひとり、熱心に見ているではないかと思ったら、なんとそれはぼくでした。だれもいないとさびしいので、ぼくがお客みたいな顔をしてバックナンバーを見ているふりをしたってわけです。そう、八百長です。
八百長といえば、広告批評の最終号には、いつもいい広告を作っている企業の方々が、たくさん、餞別広告を出してくれました。
餞別ですから、みんな、うれしいことを言ってくれる。ま、半分はお世辞で、つまり八百長みたいなもんですが、そこは広告の名門たち、読者を笑わせたり、泣かせたりしてくれるんですね。
で、今回は連休疲れのおなぐさみ、その一部をご紹介することにします。はい、まずはこれ。

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ご存じ、サントリーのBOSSですね。
「この惑星の広告批評にもっと批評されたかった」という宇宙人ジョーンズ氏の言葉がおかしい。笑えますね。次は、これ。

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なんと、ホワイト家のお父さんが、涙を流している写真。で、コピーは、「広告批評はもう叱ってくれないぞ!」。泣かせますね。笑えますね。ふざけてますね。
さて次は、日清カップヌードルと通販生活の広告。

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特に説明は要らないと思いますが、「通販生活」のほうは、なかなかひねりがきいている。「通販生活の広告」ではなくて、「通販生活という広告」というところがミソですね。つまり通販生活というのは、記事自身が「広告」だとも言える。いや、広告そのものだと言ってもいいでしょう。おなじような意味で、「テレビショッピング」も広告だとぼくは思っていますが、テレビショッピングが「悪質な広告」の典型だとすると、通販生活は「良質な広告」の見本だといっていい。そのへんのところを、ちゃんと批評してほしかったと、この広告は言っているのです。
これって、すごく面白いモンダイを含んでいるテーマなんですが、言いだすとキリがないので、そのことはいずれまた。

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これももう、説明は要らないと思います。とにかく、こういう餞別広告って、広告批評をひたすらホメてくれているわけで、一種の八百長であることはたしかです。広告批評の最終号に広告批評を悪く言う広告は出せませんからね。
でも、これって、広告批評をホメているだけかというと、実はそうじゃない。相手をホメることを通して、自分自身をホメている。「サントリーもソフトバンクも、ホメ方のセンスがいいねえ」と読者に思わせることで、好意の目はちゃんと企業に返ってくる、という仕掛けになっているのです。
こういう広告を見て、「広告批評がなくなるのは残念だなあ」と思ってくれる人たちがたくさんいて、それはそれでとてもうれしいのですが、それと同じくらい多くの人たちが、「サントリーやソフトバンクってセンスがいいなあ」と思ったに違いない。そこがすごいなあ、八百屋の長兵衛さん顔負けのプロだなあ、とぼくは思うんですね。

(念のために言っておきますが、ここで言っている「八百長」というのは、とても人間的な、ユーモラスなナレアイのことです。近ごろは「八百長=悪事=許せない行為」としか考えない人がときどきいるので、念のため)
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