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目のおなぐさみ [ことばの元気学]

so-netの渋滞がひどい。そうでなくても、W杯の熱狂でブログなんか見ているひまがない。というこでしょうか、今回はいつもの遊び仲間が参加していません。そう言うこっちも、実はW杯ではくたくたになっているのですが、そんなこんなで、今週はむかしぼくが書いた絵本をご紹介して、お茶をにごしたいと思います。どうぞ、お目こぼしの上、寝不足のお目のなぐさみに。
題して「絵本一つ目」。文・天野祐吉、絵・梶山俊夫。1976年・福音館書店。現在絶版。そっくり載せてしまうわけにはいきませんので、扉絵と、あとは文章だけでご容赦ください。


一つ目がおった。
いつのころからか山に住んでおった。
月夜に人が峠にきかかると わっと鼻先におどり出たり、
松の枝にぶらさがって 目がおちたひろうてくれやい とこえをかけたり、
わるさをしては 悦にいっておった。

ある日
峠の道で一つ目は ふるいすみつぼをひろった。
なんぞいこれは。
つつくと指先がくろくなりよる。
ほい ええもんみつけたぞ。
一つ目はとびあがり 草むらにかけこむと おのれの顔に目をかいた。
われながら ぱっちりとようかけた。
池の水に顔をうつし、ほんとうのほうの目にしわをよせて、
一つ目はくつくつわらった。
ようし きょうは里におりてやろう。
風にのって 
子どもらの唄がきこえてきた。
一つ目は草の間をすりぬけて 里にはしった。

(里の子どもたちがわらべ唄をうたいながら遊んでいる絵が入ります)

子どもらは 
ひとつ唄をくりかえしうとうては わになってあそんでおった。
一人の子がふときづくと、
いつのまにやらとなりに みなれぬ子がおって、
調子はずれの おおきなこえでうたいよる。
あんた どこのだれぞね。
だれでもええ、それ うたわんかい。
一つ目はそういうと まえよりおおきなこえでうたいはじめた。

そのとき こめつぶみたようなおおきな雨が、
はたはたと ふってきよった。
ひえっ 夕立ちぞ にげろやい。
子どもらは 頭をかかえ 水車小屋へむかってかけだした。

ほい ぬれねずみじゃ。
水車小屋にとびこんだ一つ目は 顔をつるりとなぜた。
と、その手に とろりとすみがついとる。
や、しもた 目がおちたぞ。
あわてて一つ目は まわりの子どもらをみまわした。
とまあ、これはなんと。

どの子も どの子も、
みんな一つ目であったとよ。


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北のお魚

あぁ、おなつかしや。
のったりまったりしてあったかい愛媛弁ですね!
一年半前まで愛媛の瀬戸内の島で仕事をしていました。最初に「あんたはよそ者やけんね。東京もんに何が出来るんぞ」と言われ、これはまず愛媛弁(島弁?)をマスターしなくては仕事にならんぞと必死に覚え、ついには誰の耳からしても立派な愛媛県民になれましたっけ。
大好きな言葉なので目で聞けて嬉しかったです。
愛媛の言葉に 「してまいけません」 という意味で使う 「~せられんよ。」 という言い方がありますよね。この言い回しはよそ者には上級方言で、最後まで使えませんでしたが、綺麗な言い方だなぁと思っていました。
今は札幌なので、もう使うこともなく寂しく思っておりますです。
by 北のお魚 (2006-06-20 14:28) 

tami

パチパチパチ!!!
これ今度老健施設の朗読ボランティアで読ませていただくことにしましす。皆さん、どんな反応をされるか楽しみです。
目を丸くするかしら?目を細めて聴いてくれるかしら?

今日は、いつになくあっさりとここ開きました。
かえってびっくりしました。(笑)
by tami (2006-06-21 23:38) 

tomoyo*

はじめまして。
もっと早くに訪問できたらよかった。。。
からだことば、次回の課題から参加したいと思いますので
よろしくお願いいたします。
by tomoyo* (2006-06-25 19:03) 

おさる

伊予弁なんでしょうか?
とっても心に沁みますね。
一つ目も寂しかったんですね。
でも、ほのぼのして楽しいですね。
もしかして?
女の人たちも化粧を落としたら、
みんな一つ目かもしれませんね。
おさるも洗って落としたら楽になるものがあるかもしれません。
探してみるでし!!
by おさる (2006-06-25 21:43) 

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